粒径分布の測定(その1)

教科書 p.35-

概要

粒径分布の測定に用いる試料は、前回の実験でサンプリングした袋試料である。 各班がどの試料を用いるかは、別途指示する。 粒径分布の測定は、2回の実験に分けて行う。 1回目は、

  1. ストークス法則実験法 (p.35 E1)
  2. 比重計法 (p.36 E2)
    c. 比重計定数の決定 (p.38)
    d. 手順 (p.38)

にしたがって実験をすすめる。この中で、ストークス法則実験法と 比重計定数の決定については、教科書通りの手順ですすめる。 ここで、ストークス法則実験の意義は、比重計法の測定原理を 理解するのに不可欠なストークスの法則について、実験的に 確認しておこうということである。

d. 手順については、今回と次回に分けて実験を行うため、 今回の手順について次の節で説明する。 その後で、ストークスの法則実験に関する若干の補足をする。

準備物

2試料測定分の準備物

手順

  1. 袋試料から、秤量缶を用いて含水比を測定する。この値は、 粒径加積曲線の計算で使用する。含水比の測定法については、 教科書 p.32 に説明されている通りにする。ただし、この実験では デシケーターを使用しない。また、含水比は3つの試料を測定し、 その平均を用いること。
  2. 1から約50gの試料をとり、その質量W3を測る。 試料を広口ビンに入れ、完全に浸るまで水を静かに加える。
  3. 2で作成した試料は、次回の実験までの間に、往復振とう機にて 24時間振とうさせておく。その後、その試料を用いることになるので、 班と試料の番号をビニルテープに記入し、広口ビンに貼っておく。

教科書では、試料を空気乾燥(風乾)するように指示しているが、 火山灰土では風乾せずに現場の湿度に保つと良いとされている1)。 また、粘質土においては、10-20g 程度の試料で十分であると されている。本来ならば、含水比の測定結果が出てから、測定試料の 質量を決定するのであるが、含水比の測定には炉乾時間の24時間が かかるため、学生実験においては含水比の測定結果を待たずに、 試料をとる。含水比を最大限見積もって200%としても、50gの試料が あれば十分なため、約50gの湿潤試料を用いることとする。

ストークスの法則について

静止した密度ρwTの液体中を、粒径d、 密度ρsの球状粒子を落下させたときの 粒子の沈降速度Vを計算する2)

粒子に働く力の釣合は、

浮力B + 抵抗 R - 自重 W = 0

ストークスの法則を用いると

R=3πηdV

B=(π/6)d3ρwTg, W=(π/6)d3ρsg より、

(π/6)d3ρwTg + 3πηdV - (π/6)d3ρsg = 0
(π/6)d3swT)g = 3πηdV

この式に、教科書p.40の単位系を適用すると、p.22 の式(3.13)が 導かれ、簡単な計算で p.40の式(3.28)が導かれる。 ここで、最大粒径の単位が mm, 沈降時間の単位が分となっている ことから、√内の分子が18ではなく30になっている(レポート課題1)。

比重計法では、伝統的に使われている表3.6(p.41)との互換性を保つために、 p.40のような非SI単位系が使用されている。

水の粘性係数について

ストークスの法則を確認するときには、水の粘性係数が必要と される。理科年表によると、水の粘性係数は以下のように 温度の関数となる。

温度 t (℃) 粘性係数 η(ポアズ)
0 0.01792
5 0.01520
10 0.01307
15 0.01138
20 0.01002
25 0.00890
30 0.00797

温度の測定値から、粘性係数を補間法によって計算すること。 線形補間で十分であるが、より高度な補間法を使ってもよい。

G値を用いれば、粘性係数の値は組み込まれているためにこの表を 用いる必要はなくなるが、G値を用いる場合には、表3.6(p.41)の 値が妥当であることを、粘性係数、比重、水の密度(p.32 表3.5) の値を用いて検証すること。

データシート

ストークス法則実験においては、班ごとに異なった粒径の試料を 用い、レポートはすべての班の結果をまとめて提出することになる。 そこで、データは共通のデータシートに記入し、その測定結果を 配布することにする。 以下のデータシートを用いる。

レポート課題

粒径加積曲線が得られるのは、次回の実験が終わってからである。 そこで、今回はストークスの法則に関する実験のみ、レポート課題とする。

  1. 教科書 p.40 の単位系を用いると、式 (3.28) が得られることを 確かめてみましょう。
  2. 横軸に粒径 d(mm), 縦軸に沈降速度 V(cm/分) をとり、 教科書 p.40 の式(3.28)をグラフに描いてみましょう。 そのグラフの上に、実験によって得られた粒径と沈降速度の値を プロットしてみましょう。グラフにうまくのるでしょうか。 ガラスビース、石英それぞれについて、考察しましょう。
  3. ストークスの法則の適用範囲は、レイノルズ数 Re=Vd/ν が1より小さい範囲となる。ここで、νは動粘性係数で、 粘性係数ηを密度ρで割った値 ν=η/ρとなる。 このことから、粒径によるストークスの法則の適用範囲を求め、 課題2の結果とあわせて考察してみましょう。

文献

  1. Soil Science Society of America, Methods of soil analysis Part 1, p.405, 1986
  2. 椿東一郎、荒木正夫, 水理学演習上巻, 森北出版 p.106-108, 1961

[ 土壌物理環境実験のページに戻る ]