ダルシー式と透水係数

目的

モデル土壌として均一粒径のガラスビーズを用いて飽和の定常流の圧力分布を測定し、ダルシー式

[ Darcy's equation](1)
(但し、q:水の体積フラックス(cm/s)、△H:水頭差(cmH2O)、△x:流れに沿った方向の距離(cm)、k:飽和透水係数(cm/s))

の成立を確認する。

ダルシー則とは、フランス人の水道技術者ダルシーによって発見された経験式である。経験則ではあるが、一定の条件下では問題なく適用できると認識されている。フラックスが、圧力勾配に比例するという形式は、分子拡散など他の物理現象にも多く見られるものである。

  1. 土壌内の圧力分布から透水係数を計算し、透水性と粒径、間隙率との関係を見る。
  2. 給水位置、排水位置を変え、土壌内の圧力勾配を変えた時に透水係数はどうなるか。
  3. 飽和時の単一土層と成層土層の圧力分布の違いを観察する。

実験装置(円筒カラム)の模式図

装置図

使用する土壌カラムに関するDATA

円筒1(二成層)内径1.95cm、充填されているのは、
直径1mmのビーズ:乾燥密度1.58g/cm3
豊浦砂(平均直径0.125mm):乾燥密度1.53g/cm3
円筒2(単一層)内径3.06cm、充填されているのは、
豊浦砂(平均直径0.125mm):乾燥密度1.48g/cm3、間隙率0.42
円筒3(二成層)内径2.4cm、充填されているのは、
直径0.6mmのビーズ:乾燥密度1.55g/cm3、間隙率0.40と
豊浦砂(平均直径0.125mm):乾燥密度1.57g/cm3、間隙率0.40
円筒4(単一層)内径2.0cm、充填されているのは、
豊浦砂(平均直径0.125mm):乾燥密度1.59g/cm3、間隙率0.40


実験1.ダルシー則と飽和透水係数

均一な土層内の水分分布を測定する。

実験手順

  1. 装置のセッティングを行う。
  2. 排水を止め、静水圧の確認を行う。
    (給水位置、排水位置を固定したままカラムの傾きを変えるとh、Hはどうなるか?)
  3. 排水を開始し、給水器の高さと排水口の高さを変えて、流量と圧力勾配を調節する。
  4. マノメーターの水位が安定したらマノメーターの水位を読んで水頭勾配 (△H/△x)を求める。(給水位置、排水位置を固定したままカラムの傾きを変えるとh、Hはどうなるか?)
  5. 3の水頭勾配の時の流量(Q:単位時間あたりの流出量(g/s))をビーカーで測定し、流量を円筒の断面積で割って体積フラックス(q:単位断面積あたりの流量(cm/s)、以下フラックス)、飽和透水係数を計算する。((1)式を使う)。
    (流量の測定は、3回行い、平均値をデーターとする。また、あまりばらつく場合は、測定をやり直すこと。)
  6. 3,4をいくつか(5つ程度)の水頭勾配について繰り返す。

課題1

  1. ダルシー則によると土中を流れる水のフッラクスはqは、動水勾配(全水頭勾配)に比例し、(1)式で表現することができる。

    [ Darcy's equation] (1) (変数等については前述)

    実験で得られたqと動水勾配(ΔH/Δx)の関係をグラフにして、ダルシー則((1)式)が成立しているかどうか確かめよ。また飽和透水係数は、動水勾配の影響を受けているか?

  2. 半径rの毛細管の中を流れる液体の流量Qr(単位時間毎の流出量)は次式で表現される。
    [ Poouseuille's equation } (2)

    円筒カラムがn本の毛管から構成されていると考えると(毛管モデル)、フラックスqは

    [ Equation 3] (3)

    (3)式と(1)式の比較から透水係数kは次のように与えられる。

    [ Equation 4] (4)

    実験に用いたガラスビーズや砂は粒径が比較的一定なので、円筒内の間隙もばらつきが小さい。そこで、円筒カラム内の土壌間隙が半径rの毛細管から構成されていると仮定したときの間隙系を(4)式に土壌カラムのデータで示したガラスビーズの間隙率を用いて計算して見よ。(注:計算において、ρ1g = 10-4 [ Pa/m ] として良い。また、粘性係数は温度によって変わるので、理科年表等で調べるか、または 10-3[ Pa・s] として計算すること。)

  3. 上の計算で求めた毛細管と見なした土壌間隙の径の値は妥当かどうかを理由と共に述べよ。(例えば、ガラスビーズの径と比較したら?ガラスビーズが充填されたときの間隙の形状は?…、径深に注目して考えてみると…)


実験2.成層土における圧力分布

実験1と同様の装置で、下図のように粗い粒径の粒子と細かい粒径の粒子を半分ずつ詰め、円筒内を2層に分けた。この土層内の水圧分布を測定し、単一土層の場合と比較する。

実験手順

  1. 各マノメータのメーターの間隔を計測する。
  2. 給水装置の高さ、ドリップポイントを調節し、流量を決める。
  3. 値が安定したところで、マノメーターを読み、マノメーターに挟まれた各区間の圧力勾配を求める。
  4. 流量の測定から、水の体積フラックス(q)を求める。
装置図

課題2

  1. 各マノメーターの間では、圧力分布が直線的に変化するとして、位置と圧力の関係をグラフにせよ。

  2. 粗い粒子の区間、細かい粒子の区間、粗細両粒子の接した区間の3つの区間の透水係数を求めよ。

  3. 下図のように2つの土層が接した状態では、

    模式図

    質量保存則(連続式)が成立することから、

    q1(土層1におけるフラックス)= q2(土層2におけるフラックス)

    すなわち

    [ Equation 5] (5)
    が成り立つ。

    土層全体で見ると

    [ Equation 6] (6)
    (k:土層の平均の透水係数、q:測定したフラックス)

    式(5)、(6)より

    [ Equation 7] (7)
    [ Equation 8] (8)
    となる。

    測定した粗細ビーズの接した層の透水係数がこの関係((8)式)を満たすかどうか確認せよ。


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