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ちすいけんでは1993年以来泥炭土を使って研究活動を行っています.そこで泥炭を求めて毎年,春,夏,秋と3回ほど北海道は美唄市にある美唄湿原に調査に行っています.この美唄湿原は数少ない自然状態で残された湿原で学術的に貴重であり,保全や修復のための基礎研究を行っています.
泥炭小講座
「泥炭」とは聞き慣れないかもしれませんが,辞書などでこの言葉を引いてみると次のような説明がなされています.
- 大辞泉
- 湿地や浅い沼に生える水生植物やコケ類が枯死・堆積して,ある程度分解し炭化作用を受けたもの.褐色で水分含む.ピート.
- 広辞苑
- 湿原植物などが自然堆積し,部分的に分解・炭化作用が行われた土塊状のもの.植物の組織が肉眼で識別できる.多量の水分を含み,また多少の土砂を含むことがある.すくも.
こんな説明されても分からないですよね.下の写真を見てください.これは北海道美唄湿原で採取された表層から20cmくらいまでのミズゴケ泥炭です.上部にミズゴケが生えているのが分かると思います.このように主にミズゴケからなる泥炭を高位泥炭と呼びます.そのほかに構成植物の違い(結局は存在状態の違い)により,中間泥炭,低位泥炭というのがあります.湿原の最終的な姿と言っていい高層湿原の高位泥炭は貴重で日本でもあまり見ることは出来ません.
調査研究
ここではちすいけんが実際に現場に出て行っている調査をいくつか紹介します.
湿原内試料サンプリング |
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貴重なミズゴケ泥炭なのであまり大きな穴を開けてサンプリングする事は出来ないので,必要最低限の大きさの穴を開けてサンプリングをします.写真を見ても分かるように地下水が非常に浅いために水をかき出しながらの作業でとても大変です.泥炭は植物遺体の堆積物なので非常に繊維が豊富でスコップなどでは構造を著しく乱すので刃渡り30cm以上の牛刀包丁を使ってサンプリングをします. |
湿原北側防風林試料サンプリング |
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湿原と同様に湿原周辺の防風林や畑,水田でも試料のサンプリングを行っています.湿原に比べて地下水位が深いので手間としては少し楽ですし,大きめの穴を掘ることが出来るので,作業はやりやすいです.右側の写真はサンプリングした試料です.このように柱状に切り出しサランラップで巻いて堅いケースに入れて現場と同じ水分を保ったまま東京に持ち帰り実験に用います. |
湿原内現場透水試験 |
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湿原内で現場透水試験を行っています.2カ所で揚水試験と呼ばれる試験を行っています.左が湿原の中央付近での様子で,右が東よりのササ群落の中での様子です.測定はデーターロガーとパソコンを使って行うので何もする事はありませんが,一番大変なのはパソコンなどに電気を供給する発電機を湿原内に持ち込まなければならないことで,30kg近いと思われる発電機を数百メートルもって歩くのは本当に大変です. |
そのほかに地下水位測定や浸出量の測定などを行っています.
調査研究は準備や移動が大変で,かつ時間的にも限られてくるので非常に忙しいですが,室内実験とはまた違う楽しさがあります.かつて「現場はどこまでの精度を求めるのかをしっかり考えないとダメだ.」と言われましたが,まさにその通りで,そこに現場の難しさがあると思います.現場での調査研究もちすいけんの研究においては非常に重要な位置を占めています.
これまでの研究の成果
斎藤広隆,宮崎毅,中野政詩
「美唄泥炭湿原の地表面,地下水面,浸出量の季節的変化について」;平成九年度農業土木学会講演要旨集;236-237(1997)
宮崎毅,他
「美唄泥炭地の持続的農業生産と土壌・水文・大気ダイナミックス−物質移動をフィールドサイエンスに見る」;水利科学 41(3);27-40(1997)
水利科学;(1997)
Maemura, Tsuneyuki, T. Kamitani, M. Nakano, T. Miyazaki
"Surface N2O gas emission from agricultualized peatland in Hokkaido, Japan", Proc. IGBP/BAHCLUCC joint inter-core projects symposium, 116-118(1996)
前村庸之,神谷貴文,中野政詩,宮崎毅
「泥炭地の土地利用形態による亜酸化窒素放出の差異」;平成八年度農業土木学会講演要旨集;232-233(1996)
宮崎毅,塩沢晶,西村拓,井本博美,中野政詩,粕渕辰昭,伊藤純雄
「美唄泥炭地の農業的利用と自然湿原の保全」;平成七年度農業土木学会講演要旨集;674-675(1995)
塩沢晶,富岡孝仁,宮崎毅,中野政詩
「美唄湿原における現場透水試験とその解析」;平成七年度農業土木学会講演要旨集;676-677(1995)
井本博美,斎藤広隆,宮崎毅,中野政詩
「泥炭における透水係数の異方性の測定」;平成七年度農業土木学会講演要旨集;678-679(1995)
前村庸之,神谷貴文,宮崎毅,中野政詩
「泥炭地からの亜酸化窒素の発生」;平成七年度農業土木学会講演要旨集;680-681(1995)
塩沢昌,粕淵辰昭,宮地直道,神山和則
「一次元定常地下水流動モデルによる美唄湿原の地下水位分布の解析」;農業土木学会論文集 176;11-22(1995)
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